ANSER BOOK

その答え本にあり

ふつうとはなにか?個性とはなにか?

「どうしてみんなと同じようにできないの?」「もっとふつうにできないの?」
よく聞いてきた言葉ではないでしょうか。わたしたちは幼いころから他人と比べられ、競争をして生きています。それが当たり前のことだったから、あまり疑問に思わなかったというのが率直な感想ではないでしょうか。


しかし、社会は高度で複雑になり、役割分担もわかりにくくなりました。そんな時代に「みんなと同じ」とか、「ふつう」とかいう言葉にあまり意味がなくなったように思います。そこで今回、ふつうとはなにか?個性とはなにか?について、答えとなるような本がありましたので読んでみました。

 

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 『はずれ者が進化を作る』

著者 稲垣栄洋。静岡大学教授。農学博士。雑草研究者。
生物学的な観点から、ふつうとはなにか?個性とはなにか?について語られています。

 

【参考になった点】

■ふつうとはなにか?
と、そのまえに以下の数字を覚えてみてください。

356

 
簡単ですね。
それでは、次の数字を覚えてください。

5 6  3
 1 6
 4 2  7

この問題からいえることは、人間の脳はたくさんある状態やバラバラなことが苦手ということです。人間の脳は高度なようで、これくらいの数字しか把握できないのです。

地球には約77億の人がいて、3000万種の生物が生息していると言わています。
私たちが住む自然界は、人間の脳が理解するには複雑で多様すぎるのです。
そこで人間は、この「たくさん」や「バラバラ」といったものを理解できるように工夫をしました。その例として、さきほどの2番目の問題を小さい順に整列させてみます。

1234567

これで、理解しやすくなりました。
では、これはどうでしょうか。
どれが大きいですか?どれが中くらいでしょうか?


🍎 🍎
    🍎


たぶん、どれかを基準に大きさを決めたのではないでしょうか。
つまり人間は、目の前の事象を単純に理解したいがために、並べる、数値化、優劣をつけるなどして管理しやすくしたのです。その指標として「平均」という「ものさし」を作りだしました。これが、世間でいう「ふつう」という概念ではないでしょうか。

しかし、これは人間が勝手につくった「ものさし」であって、自然界においては、ふつうという概念は存在しないということです。たとえば、ポニーという動物がいます。ポニーは大きいでしょうか?小さいでしょうか?結論をいえば、ポニーはポニーです。小さいと考えたのなら、馬などと比較したからではないでしょうか。まさに、ふつうとは幻想ともいえます。

 

■個性とはなにか?

現在、世界の人口は、およそ77憶人といわれています。さて、私と同じ人間は、この世に存在するのでしょうか。理論的に考えてみます。
ヒトの遺伝子は約2万5千です。その遺伝子が集まり46本の染色体を形づくっています。この染色体は、2本で1組の対となるため、染色体は計23対となります。子供は親から、この1対につき2本ある染色体のどちらか1本を引き継ぎます。このように染色体の引継ぎを、父母各々で23回繰り返します。すると70兆を超える組み合わせが存在します。しかも、染色体を選ぶ過程で染色体と染色体のあいだで一部交換が起こるというのですから、組み合わせは無限大です。

つまり、この世には同じ人間というものは存在しないということです。また、どこかひとつ違っても私という人間は生まれなかったということになります。

そして長い人類の歴史の中で、後にも先にも同じ存在はないのです。なぜなら私たちの親も同じように奇跡によって生まれてきたからです。その親の親もまた然りです。こうやって何億年と続く命の奇跡のリレーの中で私たちは生まれてきたということです。このことから、個性とは、ひとりひとりが全く違う存在で、多様性があると表現できそうです

 

 ■はずれ者が進化を作る

昔、オオシモフリエダシャクという白い蛾(が)がいました。この蛾は白い木の幹に止まって身を隠します。しかし、突然変異で黒い蛾が生まれました。(はずれ者です)
それからしばらくして近所に工場ができました。その工場の煙突から出るススによって木の幹が真っ黒になりました。すると白い蛾は目立ってしまい鳥に食べられ絶滅。黒い蛾だけが生き残りました。

これは一例ですが、生物の世界では環境に適応したものが生き残るようになっているそうです。例外的に生まれた黒い蛾は、人間がいう平均から大きく離れた「はずれ者」でした。しかし、環境に適応したわけです。また両生類であるトカゲは、古代は海の魚でした。トカゲの祖先は海の中の激しい生存競争から、陸上に生活の拠点を移しました。陸上への道のりは決して容易ではなかったはずです。何度も傷を負い、苦しみ、代々進化し続け、陸地へ這い上がることでオンリーワンの存在となったのでしょう。私たちの社会でも同じではないでしょうか。勝者は戦い方を変えませんが敗者は戦い方を変えていきます。考え続け、工夫を重ね、変っていくことで、オンリーワンのポジションを確立します。そして、それが次世代の「標準」となります。これまでの人類の長い歴史を振り返っても歴史を作った人物は、皆はずれ者ではなかったでしょうか。

 

【実行したい点】
■No.1になる方法

まず、どのフィールドで戦うか模索します。(競争の激しいフィールドは避けた方が賢明です)孫子の兵法のように「戦わない(=戦略)」をフィールドにするのもありだと思います。フィールド探しのヒントとして「ニッチ」(すき間)に着眼することを著者は提案しています。

<ニッチ探しのポイント>
①得意なことをする
②小さく絞り込む
③フィールドは自分で作ってしまう
④今の得意フィールドから少しだけ違う分野にシフトする(ニッチシフト)

ニッチでチャレンジを続ける→オンリーワンになる→ナンバーワンになる

参考にしたいです。

 

■自分らしさをみつける

まず、他人が私に言う「らしさ」を疑ってみることです。人間の脳は、あなたの複雑さなど理解したくないのです。だから単純に理解しやすいように自分のものさしで「〇〇な人」と決めてしまいます。果たして他人はあなたをどの角度から見ているでしょうか?

たとえば、「ゾウはどんな生き物ですか?」と聞かれると、たいていは「鼻が長い動物です」と答えます。でも、ゾウは100メートルを10秒で走る、足の速い動物でもあるのです。だから、今まで他人から着せられてきた「らしさの鎧」を脱ぎ捨て、らしさの鎧を着ていなかった幼い頃の自分の記憶を掘り起こしてみましょう。そこにきっと自分らしさがあるはずです。そして、それこそが自分の強みではないでしょうか。

 

■敗者が進化する

これまで述べたように進化するのは敗者です。しかし、ただ負ければよいというものではありません。負け方が大事と述べられています。

 <負け方のポイント>
①勝てそうか負けそうか見極める。負けるとしたら無理せず負ける。
②負けても次にチャンスがある負け方をする。

 そうやって無理をせず小さな勝ちを繰り返します。このような小さなチャレンジを繰り返すことが自分自身の成長へつながっていくものだと思います。

 

【まとめ】

生き物の世界における「個性」とは他人とは違うということではなく、一人一人が全く違う存在(多様性)であるということです。あなたは唯一無二の存在であり「ふつう」という概念は、誰かが作った単なる幻想だということです。